※ 本文中の画像は、内容を分かりやすく示した模式図・イメージです。

1つめの軸は「顎の骨にスペースを作れるか」

ベンチに窮屈そうに並んで座る4体の歯のキャラクターと、左右外側へ向かう矢印のイラスト
歯が並ぶスペースが足りていない状態です。

ガタガタの歯並びを歯を抜かずに治せるかどうかは、顎の骨に対して、すべての歯がきれいに並ぶスペースを作れるかどうかが分かれ道になります。

歯が並ぶ土台になるのは顎の骨です。骨の大きさに対して歯が並びきるかどうかを見るため、お口の中を見ただけでは判断できません。

歯が並ぶスペースさえ確保できれば、抜歯をせずに治療を進められる可能性が高くなります。逆に言えば、「抜歯するかどうか」を最初から決めているわけではなく、スペースをどれだけ作れるかをレントゲンなどの検査で見極めた結果として、抜歯が必要かどうかが決まります。

スペースを作る3つの方法

歯列を外側へ広げる拡大、奥歯を後方へ動かす遠心移動、歯の側面をわずかに削るIPRの3つを並べた模式図
左から拡大・遠心移動・IPR。これらを組み合わせてスペースを作ります。

スペースを作る方法には、主に次の3つがあります。

  1. 拡大 — 歯並びを外側に広げる
  2. 遠心移動 — 奥歯を後ろに下げる
  3. IPR — 歯の側面をごく薄く削る

これらを組み合わせることで、抜歯をしなくても歯が並ぶスペースを確保できるケースがあります。なお奥歯を後ろに送る遠心移動では、親知らずを抜くことでその分のスペースを活用できることもあります。

加えて、前歯が内側に倒れている方であれば、口元の変化も考慮しながら前歯を少し前に出すことでもスペースを作れます。

抜歯が必要になりやすいのはどんな時か

体の大きい歯のキャラクターがベンチに収まりきらず、端からはみ出しているイラスト
歯自体が大きい場合は、広げても並びきらないことがあります。

一方で、歯自体がとても大きく、それが原因でガタガタが起こっている場合は、歯並びを広げたとしても並びきらない可能性が高くなります。このようなケースでは、抜歯が必要になる可能性が高くなります。

どの程度スペースを作れるかは、レントゲンや歯型などの検査をしないと正確には分かりません。見た目だけで「抜かずにいけそう」「抜歯が必要そう」と判断することはできない、とお考えいただければと思います。

当院では実際に、同じようなガタガタの歯並びでも抜歯を選んだ症例と、抜かずに治療した症例の両方があります。八重歯・ガタガタの症例では、装置と抜歯の有無を組み合わせた複数のケースをご覧いただけます。

2つめの軸は「口元をどこまで下げたいか」

同じ女性の横顔を左右に並べ、左は口元が前に出た状態、右は口元が後方にある状態を比較した模式図
口元の位置の違いを示しています。治療による変化の程度は症例や治療計画によって異なります。

ここまでは「歯が並ぶスペースを作れるか」という話でした。もうひとつ、判断を左右する軸があります。それが口元をどこまで下げたいかです。

非抜歯でスペースを作る方法は、歯列を外側に広げたり、前歯を前に出したりと、歯を前や外へ動かす方向に働きます。そのため歯を抜かずに済む一方で、口元を大きく下げることは難しくなります。

ここが見落とされやすい点です。「歯を抜きたくない」と「口元の突出を抑えたい」というご希望は、同時には叶いにくいことがあります。歯並びのガタガタだけが気になる方であれば非抜歯で十分なことも多いのですが、口元が前に出ていることを主に気にされている場合、非抜歯で仕上げると「歯並びは整ったけれど、気にしていた部分は変わらなかった」という結果になりかねません。

口元をしっかり下げるには、前歯を後ろへ動かすためのスペースがそれだけ必要になるため、小臼歯の抜歯を選ぶケースが実際には多くなります。ただし歯を動かす距離が長くなるぶん、治療期間も相応にかかります。

どちらが良い悪いということではなく、何を優先するかによって選択が変わります。当院では、それぞれの方法で仕上がりがどう変わるかをシミュレーションでお見せしながらご相談しています。歯を抜きたくないというお考えがある場合も、まずはそのままお聞かせください。

抜歯になった場合、どの歯を抜くのか

上あごの前から6本の歯を並べ、4番目の第一小臼歯を強調した模式図
抜歯する場合、前から4番目を選ぶことが多くなります。

抜歯が必要になった場合、基本的には前から4番目の歯(第一小臼歯)を抜いて治療を進めることが多いです。見た目や噛み合わせを整えるうえで、治療をスムーズに進めやすいためです。

例えば3番目の歯(犬歯)が八重歯になっている場合、すぐ隣の4番目を抜くことで、八重歯が改善しやすくなります。そのため、出っ歯や八重歯など前歯にガタガタがある方の場合は、4番目を抜いて治療を進めるケースが多くなります。

反対に、抜歯でできたスペースを前歯ではなく奥歯を手前に動かして閉じる計画の場合は、5番目の歯を抜くほうが有利なこともあります。つまり、奥歯と前歯のどちらを動かすのが治療の主役になるかによって、4番目と5番目のどちらを抜くかが変わります。

4番目以外の歯を抜くこともあります

2つの治療計画書を挟んで、歯科医師が患者に説明している場面のイラスト
2つの治療計画をご説明し、方針は患者様にお選びいただきます。

4番目の歯よりも別の歯を抜いたほうが、結果的に長く使える歯を残せると判断した場合は、別の歯の抜歯をご提案することもあります。例えば次のようなケースです。

  1. 奥歯の状態が良くない場合 — 前から6番目や7番目の奥歯を抜いて、親知らずを手前に移動させる方法をとることがあります。歯の大きさが違うため、治療期間が1年ほど延びることもあります。
  2. 歯の根が短くなっている場合 — 根がかなり短くなり、乳歯のようにグラグラしている歯があるときは、その歯を抜いて矯正することがあります。将来的に残せる見込みの少ない歯を活かし、健康な歯を守る考え方です。

こうしたケースでは、4番目を抜く計画と、別の歯を抜く計画の両方をご説明します。それぞれの利点と欠点を比べていただいたうえで、最終的な治療方針は患者様にお選びいただいています。

まとめ

抜歯か非抜歯かは、次のように決まります。

  1. 1つめの軸は「顎の骨に対して、すべての歯が並ぶスペースを作れるか」
  2. スペースは拡大・遠心移動・IPR、場合によっては前歯を前に出すことで作る
  3. 歯自体が大きい場合は、広げても並びきらず抜歯になりやすい
  4. 2つめの軸は「口元をどこまで下げたいか」。非抜歯では口元を大きく下げにくい
  5. 抜歯する場合は前から4番目が基本。奥歯を動かす計画では5番目のこともある
  6. 歯の状態によっては、4番目以外を選んだほうがよいこともある

なお矯正治療には、歯の根が短くなる、歯ぐきが下がる、後戻りが起こるなどのリスク・副作用があります。抜歯を伴う場合・伴わない場合のどちらにも、それぞれ利点と注意点があります。

どれだけスペースを作れるかは検査をしないと分かりませんので、ご自身が抜歯になるのかどうかを知りたい方は、一度ご相談ください。当院の矯正相談は無料です。LINEでお写真を送っていただくだけの写真相談も受け付けています。