※ 本文中の画像は、内容を分かりやすく示した模式図・イメージです。
なぜ小さなネジが必要なのか
矯正では、歯にワイヤーやゴムをかけて引っ張ることで歯を動かしていきます。このとき見落とされやすいのが、引っ張られる歯だけでなく、引っ張る側にも同じ力がかかっているということです。綱引きで両方のチームが動いてしまうのと同じことが、お口の中でも起こります。
例えば前歯を後ろへ下げたいとき、奥歯を支えにして引っ張ります。すると前歯が下がる一方で、支えにしたはずの奥歯も前へ出てきてしまいます。その分だけ前歯を下げられる量が減り、思ったところまで届きません。
アンカースクリューは歯ではなく骨に固定するため、引っ張られても動きません。動かしたい歯だけを動かすために、動かない支えをつくるのがこの装置の役割です。
使わない場合に起こりうること
支えが不十分なまま治療を進めると、次のようなことが起こる場合があります。
- 出っ歯が残りやすくなる — 奥歯が前へ動いた分、前歯を下げられる量が減ります。
- 口元が前に出やすくなる — 歯を抜かずに並べようとすると歯列全体が前へ広がり、かえって口元が出て見えることがあります。この場合、結果的に抜歯が必要になることもあります。
- 歯ぐきが下がることがある — 骨の外側へ歯を押し出す形になると、歯ぐきが下がって歯が長く見えたり、しみる症状が出たりすることがあります。
いずれも「必ずそうなる」というものではありませんが、どこを支えにするかを決めないまま治療を始めると、仕上がりが計画から離れていきます。
どんなときに使うのか
当院では、主に次のような場合に使用を検討します。
- 出っ歯・口元の突出を改善したいとき
- 抜歯を伴う矯正で、前歯を大きく後ろへ下げたいとき
- 笑ったときに歯ぐきが目立つ状態を改善したいとき
- 奥歯を後ろへ動かしてスペースを作りたいとき
- 前歯が噛み合わない状態や、左右の高さの差を整えたいとき
使うことで期待できるのは、治療計画どおりに歯を動かしやすくなることです。あわせて、ゴムかけなどご自身での取り組みへの依存を減らせる場合や、治療期間が短くなる場合、条件によっては抜歯を避けられる場合もあります。ただし、どなたにも同じ効果が出るわけではありません。
なお当院では、アンカースクリューを使用する場合でも追加の費用はいただいていません。必要かどうかを費用で決めずに、治療計画の中身で選んでいただけます。※
※ アンカースクリューそのものに追加費用はかかりませんが、これとあわせて特注の装置(奥歯を大きく動かす装置や、上あごを広げる装置など)が必要になる場合は、その装置の費用が別途かかります。金額は料金表に記載しています。
よくあるご質問
Q. 入れるときは痛いですか?
表面の麻酔と局所麻酔を使用しますので、強い痛みが出ることはほとんどありません。麻酔が切れた後に鈍い違和感が数日続くことがありますが、多くの場合は日常生活に支障のない程度です。
Q. 外すときは痛いですか?
数秒から数十秒で終わることがほとんどで、多くの場合は麻酔なしで外せます。
Q. 一生入れたままですか?
いいえ。治療が終わったら取り外します。インプラントのように骨と結合させて残すものではありません。外した部分の穴は自然にふさがっていきます。
Q. どのくらいの大きさですか?
直径1.4〜2.0ミリ、長さ6〜10ミリほどが一般的です。入れたところの傷や痛みは、歯を抜く場合と比べるとはるかに小さく済みます。
Q. リスクはありますか?
主なものとして、ぐらついて途中で外れてしまうこと、周囲の歯ぐきに炎症が起こることがあります。外れた場合は入れ直したり、別の位置に付け替えたりして対応します。歯の根に近い位置に入れることになるため、事前にレントゲンで骨の状態と歯の根の位置を確認したうえで入れる位置を決めます。
まとめ
アンカースクリューは、歯を動かすための動かない支えを作る装置です。
- 歯は引っ張ると、支えにした歯も一緒に動いてしまう
- 骨に固定したネジを支えにすれば、動かしたい歯だけを動かせる
- 前歯を大きく下げたいときや、歯を上下に動かしたいときに使う
- 治療が終われば取り外す
大切なのは、ネジを入れること自体ではありません。目指す歯並びを実現するために、必要な支えをどこに作るかという設計の部分です。アンカースクリューは、そのための選択肢のひとつとお考えください。
矯正治療には、歯の根が短くなる、歯ぐきが下がる、後戻りが起こるなどのリスク・副作用があります。ご自身の場合に必要かどうかは、レントゲンなどの検査を行ったうえでご説明します。当院の矯正相談は無料です。